hakorune/docs/reference/language/field-visibility-and-delegation.md

フィールド可視性とデリゲーション設計（提案/仕様草案）

本書は Nyash 言語の「フィールド可視性」と「デリゲーション（from/override）」の設計をまとめた仕様草案です。実装は段階的に進めます。

1. フィールド可視性（Blocks）

• 構文

  box User {
      private { age, passwordHash, internalCache }
      public  { name, email, displayName }
  
      init { name, email, displayName, age }
      // ... methods ...
  }
  

• ルール
  • private: box 内のメソッドからのみアクセス可（外部アクセス不可）
  • public: 外部から obj.field で参照可
  • いずれにも属さないフィールドはエラー（明示主義）
  • me.field は可視性に関わらず常に許可（自身の内部）
  • init は現状どおり public（将来 public/private init の導入は別途検討）
• エラー例
  • 外部から user.age → Compile/Interpret Error: private field access
  • 親の private フィールド参照 → Error: parent private field not accessible

実装フェーズ（予定）

1. パーサ: private { ... } / public { ... } の受理、AST/宣言モデルに可視性付与
2. 解決/実行: 外部アクセス時に public のみ許可、me.field は常にOK
3. MIR/VM: 既存の RefGet/RefSet に可視性チェックフックを追加

2. デリゲーション（from/override）

目標: ビルトイン/プラグイン/ユーザー定義の全Boxで、同一の書き味（from/override/super呼び出し）を提供しつつ、安全性を担保する。

• 基本方針

  • 継承モデルは維持（「委譲の糖衣」ではない）
  • 親の内部フィールドは不可視（private は子からも見えない）
  • メソッド解決規則は統一：子の override → なければ親へ解決
  • 親がビルトイン/プラグインの場合、親メソッド呼び出しは BoxCall に lower（ローダ経由）

• 書式例

  box MyFile from FileBox {
      override write(x) {
          // 前処理
          from FileBox.write(x)
          // 後処理
      }
  }
  

• 安全性

  • 親の状態は親の実体としてのみ存在（フィールド継承しない）
  • from Parent.method() は親タイプ名での明示ディスパッチ（暗黙の内包はしない）
  • MIR では BoxCall を生成し、VM/Interpreter はローダへ委譲

実装フェーズ（予定）

1. MIR Lowering: 親がビルトイン/プラグインの from を常に BoxCall へ（現状踏襲）
2. VM/Interpreter: 既存どおりローダ委譲（Handle/BoxRef を統一処理）

3. 参考

• BoxRef/Handle 仕様: docs/reference/plugin-system/boxref-behavior.md
• nyash.toml v2.1–v2.2: docs/reference/plugin-system/nyash-toml-v2_1-spec.md
• 実装箇所（予定）: src/parser/declarations/box_definition.rs, src/core/model.rs, src/interpreter/expressions/access.rs, src/mir/*, src/backend/vm.rs