## 実装内容(Step 1-3 完全達成) ### Step 1: src/mir/join_ir.rs 型定義追加 - **JoinFuncId / JoinContId**: 関数・継続ID型 - **JoinFunction**: 関数(引数 = φノード) - **JoinInst**: Call/Jump/Ret/Compute 最小命令セット - **MirLikeInst**: 算術・比較命令ラッパー - **JoinModule**: 複数関数保持コンテナ - **単体テスト**: 型サニティチェック追加 ### Step 2: テストケース追加 - **apps/tests/joinir_min_loop.hako**: 最小ループ+breakカナリア - **src/tests/mir_joinir_min.rs**: 手書きJoinIR構築テスト - MIR → JoinIR手動構築で型妥当性確認 - #[ignore] で手動実行専用化 - NYASH_JOINIR_EXPERIMENT=1 トグル制御 ### Step 3: 環境変数トグル実装 - **NYASH_JOINIR_EXPERIMENT=1**: 実験モード有効化 - **デフォルト挙動**: 既存MIR/LoopForm経路のみ(破壊的変更なし) - **トグルON時**: JoinIR手書き構築テスト実行 ## Phase 26-H スコープ遵守 ✅ 型定義のみ(変換ロジックは未実装) ✅ 最小限の命令セット ✅ Debug 出力で妥当性確認 ✅ 既存パイプライン無影響 ## テスト結果 ``` $ NYASH_JOINIR_EXPERIMENT=1 cargo test --release mir_joinir_min_manual_construction -- --ignored --nocapture [joinir/min] MIR module compiled, 3 functions [joinir/min] JoinIR module constructed: [joinir/min] ✅ JoinIR型定義は妥当(Phase 26-H) test result: ok. 1 passed; 0 failed ``` ## JoinIR理論の実証 - **φノード = 関数引数**: `fn loop_step(i, k_exit)` - **merge = join関数**: 分岐後の合流点 - **ループ = 再帰関数**: `loop_step` 自己呼び出し - **break = 継続呼び出し**: `k_exit(i)` ## 次フェーズ (Phase 27.x) - LoopForm v2 → JoinIR 自動変換実装 - break/continue ハンドリング - Exit PHI の JoinIR 引数化 🌟 Generated with [Claude Code](https://claude.com/claude-code) Co-Authored-By: Claude <noreply@anthropic.com> Co-Authored-By: ChatGPT <noreply@openai.com>
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Phase 26-H — JoinIR / 関数正規化フェーズ設計図
目的: これまで「構文 → LoopForm → PHI」で説明してきた制御構造を、もう一段抽象度を上げて「関数呼び出し+継続」に正規化する中間層(JoinIR / LoopFnIR)として整理し直すこと。
最終的には「ループや if の合流点で悩む」のではなく、「関数の引数と戻り先で意味が決まる」世界に寄せ、箱の数と責務を減らしていく。
このフェーズ 26‑H ではあくまで「設計とミニ実験」に留め、スモークや本線は既存の MIR/LoopForm ルートのまま維持する。
1. 現状: LoopForm 正規化ベースの世界
現在のパイプライン(概略):
AST → MIR / LoopForm v2 → VM / LLVM
LoopForm v2 / PHI 周辺には、だいたい次のような箱が存在している:
- 構造系
LoopFormBuilder/LoopFormOpsControlForm(If/Loop の形と preds)
- PHI 生成系
HeaderPhiBuilderExitPhiBuilderBodyLocalPhiBuilderIfBodyLocalMergeBoxPhiBuilderBox(If φ 統合)PhiInvariantsBox(Fail-Fast チェック)
- 解析/分類系
LoopVarClassBox(Pinned / Carrier / BodyLocal*)LoopExitLivenessBox(ExitLiveness、実装は段階的)LocalScopeInspectorBox- if 解析系(
if_phi.rsの補助群)
これらの箱が「どの変数がループをまたぐか」「どこで φ が必要か」「Exit で何を Live とみなすか」を決めているが、その分、箱の数と責務が多く、ループの形を変えるたびに PHI 側の負担が増えている。
2. 代案: 「関数を呼ぶ回数=ループ」というモデル
発想の転換:
- 今: 構文を LoopForm に正規化し、ループ構造(header/body/latch/exit)を中心に世界を説明している。
- 代案: 構文を「関数呼び出し」に正規化し、関数を繰り返し呼ぶこと自体がループというモデルに寄せる。
2.1 ループの例
元のコード(擬似 Nyash):
var x = 0
loop {
x = x + 1
if x >= 10 { break }
}
print(x)
関数ループモデルで見ると:
// ループ一歩ぶんの関数(Box)
step(x, k_exit) {
if x >= 10 {
k_exit(x) // ループ終了して「先」に進む
} else {
step(x + 1, k_exit) // もう一周
}
}
// ループの「先」の処理
k_exit = (v) => {
print(v)
}
// 実行開始
step(0, k_exit)
- ループ =
stepを何回も呼ぶこと break=k_exit(...)を呼ぶことcontinue=step(...)を呼ぶこと- φ / LoopCarried 変数 =
stepの引数
ここでは「ループヘッダの φ で悩む」のではなく、「step の引数・k_exit の引数をどう定義するか」に責務が集中する。
2.2 パイプラインの再構成案
現在:
AST → MIR / LoopForm v2 → VM/LLVM
ここに 1 段挟む:
AST → MIR / LoopForm v2 → ★LoopFnIR(関数ループ層) → VM/LLVM
この LoopFnIR/JoinIR 層で:
- 各 LoopForm について「ループ関数(step) + 継続関数(k_exit)」を合成。
- ループの PHI / carrier / exit φ はすべて
step/k_exitの引数として表現。 - 下流(VM / LLVM)は「関数呼び出し(および再帰のループ化や展開)」だけを見ればよい。
結果として:
- LoopForm v2 は「LoopFnIR を作る前段」に役割縮小。
- BodyLocal / Exit φ の詳細設計は「引数に何を持っていくか?」という関数インターフェース設計に吸収される。
4. このフェーズで実装する箱 / 概念ラベル
-
実装として増やす(26-H 内で手を動かすもの)
join_ir.rs: JoinIR 型(関数/ブロック/命令)+ダンプ- LoopForm→JoinIR のミニ変換(1 ケース限定で OK)
- 実験トグル(例:
NYASH_JOINIR_EXPERIMENT=1)で JoinIR をダンプするフック
-
概念ラベル(27.x 以降に検討)
- MirQuery のようなビュー層(reads/writes/succs を trait 化)
- LoopFnLoweringBox / JoinIRBox の分割や最適化パス
- VM/LLVM への統合
※ このフェーズでは「設計+ミニ実験のみ」で、本線スモークは既存 MIR/LoopForm 経路を維持する。
3. 箱の数と最終形のイメージ
3.1 現在の PHI/Loop 周辺の箱(概略)
ざっくりカテゴリ分けすると:
- 構造:
LoopFormBuilderControlForm
- PHI 生成:
HeaderPhiBuilderExitPhiBuilderBodyLocalPhiBuilderIfBodyLocalMergeBoxPhiBuilderBoxPhiInvariantsBox
- 解析:
LoopVarClassBoxLoopExitLivenessBoxLocalScopeInspectorBox- if 解析系(IfAnalysisBox 的なもの)
関数正規化前提で進むと、最終的には:
- PHI を直接扱う箱は「LoopForm→LoopFnIR に変換する前段」に閉じ込める。
- LoopFnIR 導入後の本線では、次のような少数の箱が中心になる:
LoopFnLoweringBox(LoopForm → LoopFnIR / JoinIR)JoinIRBox(JoinIR の保持・最適化)- 既存の VM/LLVM バックエンド(JoinIR からのコード生成側)
という構造に寄せられる見込み。
このフェーズ 26‑H では、「最終的にそこに寄せるための設計図」を書くところまでを目標とする。
4. 26-H でやること(スコープ)
- JoinIR / LoopFnIR の設計ドキュメント作成
- 命令セット(call / ret / jump / 継続)の最小定義。
- if / loop / break / continue / return を JoinIR に落とす書き換え規則。
- φ = 関数引数、merge = join 関数、loop = 再帰関数+exit 継続、という対応表。
- 最小 1 ケースの手書き変換実験(MIR → JoinIR)
- ループ+break を含む簡単な関数を 1 例だけ JoinIR に落とし、形を確認。
- MirQueryBox 経由で必要な MIR ビュー API の確認
- reads/writes/succs など、JoinIR 変換に必要な情報がすでに
MirQueryで取れるかチェック。
- reads/writes/succs など、JoinIR 変換に必要な情報がすでに
- すべてトグル OFF で行い、本線(MIR/LoopForm ルート)のスモークには影響させない。
5. やらないこと(26-H では保留)
- 既存ルート(MIR/LoopForm/VM/LLVM)を JoinIR で置き換える。
- スモーク / CI のデフォルト経路変更。
- Loop/PHI 既存実装の削除(これは 27.x 以降の段階で検討)。
6. 実験計画(段階)
-
設計シート
docs/development/architecture/join-ir.mdに命令セット・変換規則・対応表を記述(φ=引数, merge=join, loop=再帰)。
-
ミニ変換実験 1 ケース
- 最小ループ(例:
loop(i < 3) { if i >= 2 { break } i = i + 1 } return i)を MIR → JoinIR へ手書き変換し、テストでダンプを確認。VM/LLVM 実行までは行わない。
- 最小ループ(例:
-
トランスレータ骨格
src/mir/join_ir.rsなどに型定義だけ追加(未配線、トグル OFF)。MirQueryBox(reads/writes/succs)で必要なビューが揃っているか確認。
-
トグル付き実験
NYASH_JOINIR_EXPERIMENT=1などのトグルで最小ケースを JoinIR 変換・ダンプするルートを作る(デフォルト OFF でスモーク影響なし)。
7. 受け入れ基準(このフェーズ)
- docs に JoinIR / LoopFnIR の設計と変換規則が明記されている。
- 最小 1 ケースの JoinIR 変換がテストでダンプできる(join/step/k_exit の形になっている)。
- 本線スモーク(既存 MIR ルート)は影響なし(トグル OFF)。
8. 次フェーズへの橋渡し
- 変換器を拡張して FuncScanner / Stage‑B などカナリアを JoinIR で通す(トグル付き)。
- ExitLiveness や BodyLocal PHI の一部を LoopFnIR 側に吸収し、PHI/Loop 周辺の箱を徐々に減らす。
- VM/LLVM 実行経路に JoinIR を統合するのは 27.x 以降を想定し、当面は「設計+ミニ実験」に留める。