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hakorune/docs/development/roadmap/phases/phase-25.1e
nyash-codex 75f3df2505 refactor(mir): Phase 25.1o - do_break/continue 共通化(LoopExitKind型統一)
【変更内容】
1. LoopExitKind enum定義
   - Break / Continue の型安全な区別

2. do_loop_exit() 共通メソッド作成(47行)
   - スナップショット取得(共通処理)
   - kind別のスナップショット保存
   - kind別のジャンプターゲット
   - unreachable ブロック切り替え(共通処理)

3. do_break/continue をthin wrapperに変換
   - do_break: 13行 → 4行
   - do_continue: 12行 → 4行
   - 合計21行削減

【効果】
- 構造改善: break/continue の共通ロジック一箇所に集約
- 保守性向上: デバッグログなどの共通処理が統一管理
- 拡張性向上: labeled break/continue等の将来拡張が容易

【検証結果】
- ビルド成功(警告なし)
- mir_stageb_loop_break_continue_verifies: PASS
- /tmp/loop_continue_fixed.hako: RC=3(期待通り)

関連: Phase 25.1m (continue PHI修正), Phase 25.1n (レガシー削除)
2025-11-19 08:56:44 +09:00
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Phase 25.1e — LoopForm PHI v2 Migration (Rust MIR)

Status: planningLoopForm/PHI 正規化フェーズ・挙動は変えないRust側のみ

ゴール

  • ループまわりの SSA / PHI 生成の「SSOT単一の正」を LoopForm v2 + phi_core に寄せて、Legacy 経路との二重管理を解消する。
  • Stage1 / StageB / selfhost で見えている以下の問題を、LoopForm 側の設計として整理して直す:
    • 複雑ループ(Stage1UsingResolverFull._find_from/3 など)での「同一 ValueId の二重定義PHI vs 既存値)」。
    • Merge blockヘッダ合流ブロックで、predecessor 定義値を PHI なしで読むことによる nondominating use。
    • pinned 受信箱(__pin$*@recv)や Loop carrier 変数の PHI 対象範囲が曖昧で、legacy/local_ssa/LoopForm の責務が重なっている問題。
  • 既存テストStageB 最小ハーネスselfhost CLI から見える「SSA/PHI 赤ログ」を、LoopForm v2 経路を正とすることで構造的に潰す。

前提 / これまでにやったこと25.1d まで)

  • Local 変数の SSA 化:
    • build_local_statement を修正し、local a = expr ごとに新しい ValueId を払い出して Copy 命令で初期化値をコピーするように統一。
    • src/tests/mir_locals_ssa.rslocal a,b,c パターンを固定し、Const/NewBox とローカル変数レジスタが分離されることを確認済み。
  • Callee 解決/ガード:
    • CalleeBoxKind / CalleeResolverBox / CalleeGuardBox の導入により、StageB / Stage1 の static compiler Box と runtime Box の混線を構造的に防止。
    • StageBArgsBox.resolve_src/1 内の args.get(i)Stage1UsingResolverBox.get に化ける問題は解消済み。
  • Loop/PHI まわりの scaffolding:
    • phi_core::loop_phi::{prepare_loop_variables_with, seal_incomplete_phis_with, build_exit_phis_with}LoopPhiOps を導入し、LoopBuilder から PHI 生成を委譲可能な構造は整備済み。
    • LoopForm v2 (LoopFormBuilder + LoopFormOps) は導線のみ実装済みで、既定では legacy 経路(build_loop_legacy)が使われている。

残っている問題は、主に legacy LoopBuilder / loop_phi / LoopForm v2 の責務が重なっているところだよ。

方針25.1e

  • SSOT を決める:
    • ループの PHI 生成の「正」は LoopForm v2 (LoopFormBuilder + LoopFormOps + phi_core::loop_phi/if_phi) に置く。
    • build_loop_legacy + prepare_loop_variables_with は「互換レイヤ/移行レイヤ」と位置づけ、最終的には LoopForm v2 の薄いラッパに縮退させる。
  • Feature Flag で段階導入(※この段階の設計メモ):
    • 当初は NYASH_LOOPFORM_PHI_V2=1 のときだけ LoopForm v2 経路を使う案だったが、 現在は LoopForm v2 が既定実装となっており、legacy 経路は撤去済み。
    • NYASH_LOOPFORM_PHI_V2 は互換性のために残っているが、挙動切り替えには使われない。
  • 1 バグ 1 パターンで前進:
    • mir_stage1_using_resolver_full_collect_entries_verifies や StageB 最小ハーネスで見えている赤ログは、それぞれ最小 Hako に絞って LoopForm v2 側で再現・修正する。
    • 同時に legacy 側からは同じ責務PHI 生成ロジック)を抜いていき、二重管理を減らす。

タスク粒度(やることリスト)

1. LoopForm v2 の足場をテストで固める

1.1 LoopForm v2 専用テストモードの追加(→ 現在は「LoopForm v2 が既定」の前提で完了)

  • mir_stage1_using_resolver_full_collect_entries_verifies は LoopForm v2 前提で緑になっており、 もはやフラグは不要(テスト内の NYASH_LOOPFORM_PHI_V2 設定も削除済み)。

1.2 StageB 最小ハーネス用ループ抜き出しテスト

  • lang/src/compiler/tests/stageb_min_sample.hako から、代表的なループだけを抜き出した Hako を作り、LoopForm v2 経路(NYASH_LOOPFORM_PHI_V2=1)で MirVerifier を通すテストを追加。
  • 目的: StageB / selfhost CLI で見えているループ系のバグを、純粋な LoopForm/PHI 問題として Rust テストに落とし込む。

2. Legacy / v2 の責務切り分け

2.1 prepare_loop_variables の責務縮小(実施中の変更の整備)

  • 既に導入したフィルタリング:
    • prepare_loop_variables が preheader の variable_map 全体ではなく、「ループキャリア変数body で再代入されるもの)+ pinned 変数(__pin$*)」だけを PHI 対象にするように変更。
    • 効果: text_len / pattern_len などループ不変なローカルに PHI を張らないことで、ValueId の二重定義/UseBeforeDef が起きにくくなる。
  • 25.1e では、この変更を LoopForm v2 側の設計として明文化し、legacy 側のコメントやドキュメントもそれに揃える。

2.2 LoopForm v2 での PHI 生成を SSOT にする

  • LoopFormBuilder::prepare_structure / emit_preheader / emit_header_phis の挙動をドキュメント化し、「どの変数に PHI を張るか」のルールを固定:
    • 関数パラメータ 明示的なループキャリア変数body 内で再代入される)+ pinned 変数のみ。
    • ループ不変変数は preheader の値をそのまま使い、PHI を作らない。
  • build_loop_legacy の PHI 補助ロジックheader/exit での snapshot + PHI 生成は、LoopForm v2 のロジックと重複しないように段階的に削る。

3. mir_stage1_using_resolver_full_collect_entries の赤ログ解消

  • 現状の代表的なエラー:
    • Value %24 / %25 / %26 defined multiple times (bb53 vs bb54)
    • Merge block bb54 uses predecessor-defined value %28/%29/%27 from bb59/bb61 without Phi
  • タスク:
    1. _find_from ループに対応する Hako 断片を LoopForm v2 経路でミニテスト化。
    2. LoopForm v2 側で:
      • preheader/header/latch/exit の各ブロックに対して、どの変数が carrier/pinned なのかを明示的に計算。
      • PHI dst の ValueId 割り当てを MirFunction::next_value_id に完全委譲し、既存 SSA 値と衝突しないようにする。
      • header での PHI 再定義(%24 copy + phi %24 のような形)を避けるため、古い値と新しい値のバインディングを LoopForm 内部で完結させる。
    3. 修正後、mir_stage1_using_resolver_full_collect_entries_verifies が LoopForm v2 経路で緑になることを確認。

4. StageB / selfhost CLI への波及

  • StageB 最小ハーネス(tools/test_stageb_min.sh)と selfhost CLI スモークを、LoopForm v2 経路で試験的に実行:
    • NYASH_LOOPFORM_PHI_V2=1 にした状態で Test2compiler_stageb.hako 経由)と selfhost CLI を実行し、ValueId 未定義や PHI 不整合が減っていることを確認。
  • 25.1e のスコープでは、「v2 経路での挙動が legacy より悪化しない(少なくとも同程度、可能なら改善)」ことを目標に、必要最小限の修正に留める。

設計図 — LoopForm v2 Scope モデル

25.1e では「すべてのループif/else を LoopForm v2 のスコープとして見る」という前提で設計を固める。 ここでは スコープ単位の入出力と break/continue の扱い を明文化する。

1. 基本モデルLoopScope / IfScope

  • すべての制御構造は「スコープ」として扱う:
    • LoopScope: while/loop 相当Nyash の loop (cond) { ... })。
    • IfScope: if (cond) { then } else { else }
  • 各スコープは次の情報を持つ:
    • 入力: Env_in … スコープ入口時点の variable_map名前→ValueId
    • 出力: Env_out … スコープ出口時点の variable_map
    • 内部状態:
      • Carriers: ループ本体で再代入される変数名の集合。
      • Pinned: ループをまたいで保持する必要がある値(__pin$*@recvme の一部など)。
      • BreakSnaps: break 到達時の Env スナップショットの集合。
      • ContinueSnaps: continue 到達時の Env スナップショットの集合。

LoopForm v2 は「各スコープの Env_inEnv_out を定義し、SSA/PHI をその範囲で完結させる」ことを目標にする。

2. LoopScope の形状とブロック

LoopScope は LLVM の canonical form に従う:

preheader → header (PHI) → body → latch → header
                      ↘ exit
  • preheader:
    • ループに入る直前のブロック。
    • Env_in(loop) をそのまま保持し、loop entry 用の Copy をここで emit するCarrier/Pinned のみ)。
  • header:
    • ループ条件・合流点。
    • Entry 時点では preheader からの Copy を入力に PHI を seed するだけlatch/continue は後で seal
  • body:
    • ループ本体。Carriers に対する再代入や break/continue が発生する。
  • latch:
    • body の末尾ブロックcontinue でヘッダに戻る前に通る最後のブロック)。
    • Env_latch として LoopForm v2 に引き継がれ、header PHI の backedge 値に使われる。
  • exit:
    • ループ脱出ブロック。BreakSnaps と header fall-through をマージして exit PHI を作る。

3. 変数分類 — Carrier / Pinned / Invariant

  • Carrier:
    • ループ本体body再代入される 変数。
    • 例: i, a, b などのインデックスや累積値。
    • LoopScope では:
      • header entry で phi(entry, latch) を必ず持つ。
      • exit でも header 値と break 値を PHI でマージする。
  • Pinned:
    • me レシーバや __pin$*@recv のように、ループをまたいで同じ Box を指し続ける必要がある値。
    • ループ内の再代入はほとんどないが、「PHI に乗せておかないと次のイテレーションで UseBeforeDef になる」種類の値。
    • LoopScope では:
      • header PHI の入力として preheader の Copy を用意する(prepare_structure 相当)。
      • break/continue/exit でも pinned 値が破綻しないように header/exit PHI に含める。
  • Invariant:
    • ループ内で再代入されない、純粋な不変ローカル・パラメータ。
    • 例: text_len, pattern_len のような長さ。
    • LoopScope では:
      • preheader 値をそのまま使い、PHI には乗せないValueId の二重定義を避ける)。

LoopForm v2 のルール:

  • PHI の対象は Carrier + Pinned のみ。Invariant は preheader の値を直接参照する。

4. break / continue の扱い

4.1 continue

  • continue は「現在のループの latch ブロックにジャンプして header に戻る」。
  • LoopScope では:
    • ContinueSnaps(block_id, VarSnapshot) を記録するblock_id は continue が現れたブロック)。
    • seal_phis 実行時に:
      • ContinueSnaps のスナップショットから Carrier/Pinned 変数の値を集め、
      • header の IncompletePhiIncompletePhi { var_name, phi_id, known_inputs })に (continue_block, value) を追加する。
  • 条件: continue は「現在のループスコープ」からのみ脱出し、外側のスコープには影響しない。

4.2 break

  • break は「現在のループを脱出し、exit ブロックへ遷移する」。
  • LoopScope では:
    • BreakSnaps(block_id, VarSnapshot) を記録する。
    • build_exit_phis 実行時に:
      • header fall-through の Snapshot header_exit_snapshotBreakSnaps をマージし、
      • exit ブロックで PHI を生成する:
        • 1 predecessor のみ → 直接 bind。
        • 2 つ以上 → phi(header, break1, break2, ...) を作る。
  • ここでも PHI 対象は Carrier + Pinned のみ。Invariant は preheader/header の値で十分。

5. スコープ入出力と変数の「渡し方」

5.1 LoopScope の Env 入出力

  • 入力: Env_in(loop) = ループ直前preheader 手前)の variable_map
    • LoopForm v2 はここから:
      • Carrier/Pinned を抽出して PHI 用の構造を準備。
      • preheader に必要な Copy を emit。
  • 出力: Env_out(loop) = exit ブロック直後の variable_map
    • Carrier/Pinned は exit PHI の結果に更新される。
    • Invariant は Env_in(loop) の値をそのまま引き継ぐ。

LoopScope の契約:

  • 「ループの外側から見える変数」は Carrier/Pinned に限らず全部だが、
    • ループ内で変わり得るのは Carrier/Pinned。
    • ループ内で決して変わらないものは Envin と Envout で同じ ValueId になる。

5.2 IfScope の Env 入出力

  • IfScope も同様に:
    • Env_in(if) = pre-if スナップショット。
    • Env_then_end, Env_else_end を計算し、
    • 変化した変数についてのみ merge PHI を生成(phi_core::if_phi::merge_modified_at_merge_with)。
  • LoopScope と組み合わせる場合loop header 内の if など)は:
    • LoopForm が header/body/latch の枠を作り、
    • その中の if は IfScope として φ を 張る。
    • LoopScope は「if によって更新された Carrier/Pinned の最終値」を snapshot として扱い、次の header/latch PHI の入力に使う。

6. break/continue を含む複雑パターン

代表的な難パターン:

  • ループ内 if の中で break/continue が出るケース:
loop (i < n) {
  local ch = text.substring(i, i+1)
  if ch == " " {
    i = i + 1
    continue
  }
  if ch == "," {
    break
  }
  i = i + 1
}

LoopForm v2 での扱い:

  • Carrier: i
  • Pinned: text, n、必要に応じて pinned recv__pin$*@recv)。
  • IfScope 内で:
    • continueContinueSnaps に i/text/n のスナップショットを保存。
    • breakBreakSnaps に同様のスナップショットを保存。
  • seal/build_exit 時:
    • header PHI: i と pinned recv のみを対象に、preheader/latch/continue からの値を統合。
    • exit PHI: i や pinned recv を header fall-through と break ブロックから統合。

これにより、「どのスコープからどの変数が外に出るか」「break/continue でどの値が生き残るか」が LoopForm v2 の規則で明示される。

7. この設計図の適用範囲

  • 対象:
    • Rust MIR builder (MirBuilder + LoopBuilder + LoopFormBuilder) が生成するすべての loop/if/else 構造。
    • JSON v0 Bridge の loop loweringBridge 側にも LoopFormOps 実装を追加して同じアルゴリズムを使う)。
  • スコープ外25.1e 時点):
    • Nyash .hako 側 MirBuilderselfhost builderの loop/if 実装。
    • try/catch/finally の完全な LoopForm への統合(現状は独自の cf_try_catch ルールで SSA を保っている)。

25.1e では、この設計図をベースに「_find_from ループ」「StageB 最小ループ」などの代表ケースから LoopForm v2 に寄せていき、
legacy LoopBuilder 側から重複ロジックを削っていくのが次のステップになる。

スコープ外 / 後続フェーズ候補

  • Nyash 側 MirBuilder.hako 実装)の LoopForm 対応:
    • ここでは Rust MIR builder 側の LoopForm/PHI を整えることに集中し、.hako 側 MirBuilder への LoopForm 移植は Phase 25.1f 以降のタスクとする。
  • ループ最適化unrolling / strength reduction など):
    • 25.1e はあくまで「正しい SSA/PHI を作る」のが目的であり、性能最適化は Phase 26+ で扱う。

メモ(現状の観測ログ)

  • mir_stage1_using_resolver_full_collect_entries_verifies 実行時:
    • _find_from / collect_entries 内で多数の PHI が生成されているが、header/merge ブロックで既存の ValueId と衝突して Value %N defined multiple times が発生。
    • merge ブロックbb54 など)で predecessorbb59, bb61由来の値を PHI なしで読んでいる箇所があり、nondominating use / Merge block uses predecessor-defined value without Phi がレポートされている。
  • LoopBuilder::prepare_loop_variables による「全変数 PHI 化」は、LocalSSALoopForm の両方が入った状態では過剰であり、キャリアpinned のみに制限する必要があることが分かっている。