# JoinIR Loop Pattern Space (Phase 171 Ultra‑Think Memo) このメモは「JoinIR のループパターン空間」を構造的に整理したものだよ。 総当たりではなく、**直交する少数の軸**を組み合わせることで有限のパターンに収束することを確認する。 --- ## 1. ループを構成する直交軸 ループはだいたい次の 6 軸の組み合わせで記述できる: | 軸 | 選択肢 | 説明 | |-------------------|------------------------------------|-------------------------------| | A. 継続条件 | ① なし ② 単純 ③ 複合 | `loop(cond)` の `cond` | | B. 早期終了 | ① なし ② break ③ 条件付き break | ループを「抜ける」経路 | | C. スキップ | ① なし ② continue ③ 条件付き cont | 次のイテレーションに「飛ぶ」 | | D. PHI 分岐 | ① なし ② if‑PHI ③ match‑PHI | 条件に応じて値が変わるパターン | | E. 条件変数のスコープ | ① OuterLocal ② LoopBodyLocal | 条件で参照される変数の定義位置 | | F. キャリア更新 | ① 単一 ② 複数 ③ 条件付き | ループ内での状態更新パターン | この 6 軸は、それぞれ 2〜3 通りしかないので、理論上は最大 3×3×3×3×2×3=486 通りの組み合わせになるが、 実際に意味のあるパターンはずっと少ない(10〜20 程度)ことが分かった。 --- ## 2. 現在 JoinIR が正規化済みのパターン 代表ループと対応する Pattern はだいたいこうなっている: | Pattern | 代表例 | A継続 | B終了 | Cスキップ | D‑PHI | E変数 | F更新 | |----------------|------------------------------|---------|--------------|-----------------|---------|------------|----------| | P1: Minimal | `loop_min_while.hako` | 単純 | なし | なし | なし | Outer | 単一 | | P2: Break | `joinir_min_loop.hako` | 単純 | 条件付きbreak | なし | なし | Outer | 単一 | | P3: If‑PHI | `loop_if_phi.hako` | 単純 | なし | なし | if‑PHI | Outer | 条件付き | | P4: Continue | `loop_continue_pattern4` | 単純 | なし | 条件付きcont | なし | Outer | 単一 | | P5: Trim‑like* | `TrimTest.trim`(設計中) | 単純 | 条件付きbreak | なし | なし | BodyLocal | 単一 | \*P5 は Phase 171 時点では「検出+安全性判定」まで。実際の JoinIR lower は Phase 172 以降の仕事。 ここまでで: - OuterLocal 条件(関数パラメータや外側ローカル)を持つ基本的な while/break/continue/if‑PHI は JoinIR で正規化済み。 - LoopBodyLocal 条件(`local ch = ...; if ch == ' ' { break }`)は **LoopConditionScopeBox で Fail‑Fast** し、 Trim パターンだけを LoopBodyCarrierPromoter/TrimLoopHelper で特例として扱う設計にしている。 --- ## 3. これから増やす候補パターン 実際の Nyash コードを見た上で、「出そうだな」と分かっているパターンをいくつか挙げておく。 ### P6: break + continue 同時 ```hako loop (cond) { if x { continue } if y { break } ... } ``` - A: 単純 - B: 条件付き break - C: 条件付き continue - E: OuterLocal 条件(が理想) ### P7: 複数キャリア + 条件付き更新 ```hako loop (i < n) { if arr[i] > max { max = arr[i] } if arr[i] < min { min = arr[i] } i = i + 1 } ``` - A: 単純 - B: なし - C: なし - D: なし or if‑PHI に相当 - F: 複数+条件付き ### P8: ネストループ(外側ループへの break/continue) ```hako loop (i < n) { loop (j < m) { if cond { break outer } // labeled break } } ``` ※ Nyash 言語仕様で outer break をどう扱うか次第で、JoinIR 側も変わる。 ### P9: match‑PHI ```hako loop (i < n) { result = match state { "A" => compute_a() "B" => compute_b() } } ``` これは if‑PHI を複数ケースに拡張した形。JoinIR の If/Select/PHI パスを再利用できるはず。 ### P10: 無限ループ + 内部 break ```hako loop (true) { if done { break } } ``` 構造としては P2 の特殊ケース(A: 継続条件なし+B: break)として扱える。 ### P11: 複合継続条件 + LoopBodyLocal ```hako loop (i < n && is_valid) { local x = compute() is_valid = check(x) } ``` これは LoopBodyLocal 状態を継続条件に折り込むパターン。 BoolExprLowerer + LoopBodyCarrierPromoter の拡張で扱える可能性がある。 ### P12: early return 内包 ```hako loop (i < n) { if error { return null } // ループを抜けて関数終了 } ``` ループ exit と関数 exit が混ざるパターン。ExitLine とは別に「関数全体の戻り値ライン」とどう噛ませるかの設計が必要。 --- ## 4. 収束性について - 各軸が有限個の状態しか取らないこと、 - 多くの組み合わせが意味を持たない/禁止パターンであること(無限ループ、進まないループなど) から、JoinIR で真面目に扱うべきループ形は **高々数十種類** に収束する。 実運用上の優先順としては: 1. P1–P4: 基本パターン(すでに実装済み) 2. P5: Trim / JsonParser で現実に必要な LoopBodyLocal 条件の一部(昇格可能なもの) 3. P6, P7, P12: パーサ/集計/エラー処理で頻出 4. P8, P9, P11: 言語仕様や実アプリのニーズを見ながら段階的に という順で Box を増やしていけば、「パターン爆発」にはならずに済む想定だよ。 --- ## 5. 関連ドキュメント - `joinir-architecture-overview.md` JoinIR 全体の箱と契約。Loop/If/ExitLine/Boundary/条件式ラインの全体図。 - `phase33-16-design.md`, `PHASE_33_16_SUMMARY.md` Loop header PHI / ExitLine / Boundary 再設計の詳細。 - `phase166-jsonparser-loop-recheck.md` JsonParserBox / Trim 系ループのインベントリと、どの Pattern に入るかの観測ログ。 - `phase171-pattern5-loop-inventory.md` Trim/JsonParser 向け Pattern5(LoopBodyLocal 条件)設計の進捗。